魚の視力はどれくらいあるのでしょうか。
餌やルアーをどのように見分けているのだろうか。
釣り人は魚の目を欺くために、ルアーやライン、フックなど様々な手段を考えます。
これらには、生物学的に裏付けがあるのか、調べてまとめてみました。
魚の目の構造と視力
人間の目よりも水晶体が厚く、視野が広いのが魚の目の特徴です。
また、人間の目は水晶体の厚みを変えてピントを合わせるのに対し、魚は水晶体の位置を動かしてピントを合わせます。
「視野が広い反面、視力が弱い」のが魚の目といえます。
ただし、陸の上と水中では見え方が違う為、人間の視力と単純比較はできません。
魚種 | 視力 |
ブリ | 0.11 |
スズキ | 0.12 |
マアジ | 0.12 |
クロダイ | 0.13 |
メジナ | 0.13 |
マハタ | 0.24 |
上の表のように、人間でいうと0.1~0.3程度しかないですが、人間が水中で見通せる距離の倍以上まで見えている研究結果もあります。
魚によって見えやすい方向が違う
顔の前面に目のある人間と顔の側面に目のある魚。
人間と魚では、体に対する目の付き方からして違っています。
首を動かして振り向く動きができない魚は、常に上下左右、すべての方向が見えていないといけませんので、魚の目は視界が広く、目に対して180度に近い範囲を見渡すことが可能になります。
しかし、良く見える範囲は魚によって違い、体の側面に目が付いている魚は、両目の視界が重なる範囲については良く見えるものの、そこから外れた範囲については極端に視力が落ちるとされています。
アジやカツオは、斜め上方向、スズキやマハタは前方方向、マダイやクロダイは斜め下方向が、最も良く見える方向です。このことは、目の付き方を見ていただいても想像がつきます。
フラットフィッシュのように頭の方に目が付いていれば、上方向が良く見えるだろうし、下側に付いていれば下方向が良く見えるという事になります。
イワナやヤマメのように主に表層にいる小魚や昆虫を捕食している魚と、フナのように底の動植物を食べている魚を見比べれば、その違いも判りやすいでしょう。
魚から釣り人は見えているのか
魚は、水面を通して陸上まで見えていると考えられています。
その視野は97度で、水中と空気中での光の屈折率の違いから、頭上だけでなく水平線近くまで見えていることになります。
魚の目は、視野から外れた範囲であっても、動いているものをとらえる動体視力は非常に優れています。
渓流釣りに代表されるような浅いところに棲む魚に近付くときには、ゆっくり隠れるようにして動くことは、魚に釣り人の存在を察知されないために必要な事だといえます。
水の濁りやサラシが沸いている状況下では、良く釣れるという釣り人も多い筈です。
色を見分ける能力
網膜細胞には、色の識別に優れる錐体(すいたい)細胞というものがあり、人間には3種類の錐体細胞があります。
それぞれが認識する光の波長が異なり、人間は3つの現職をとらえ、その掛け合わせで色を判断しているということになります。
多くの魚には、この錐体細胞が4種類あるので、色の識別に関しては人間以上で、多くの魚は色の識別ができることが証明されています。
マグロやカツオなどは、色を識別していないとされてるという報告もあります。
ただ、そのことが魚にとって逃げるか、攻撃するか、食いつくかといった判断にどのように影響しているかはわかりません。
例えば、イワシなどの小魚を捕食している魚を釣るためのルアーは、イワシをリアルに模したカラーだけではなく、黄色やピンクといった自然界には存在しないカラーで釣れることは頻繁にありますよね。反対に同じイワシカラーでも微妙な差で釣れたり、釣れなかったりします。
いずれにしても、「釣れるカラー」というのは、学術的な裏付けよりも釣り人の経験則によるものが大きいといえるでしょう。
夜の視力
人間と同じく、魚の目には前述の錐体細胞以外に、桿体(かんたい)細胞というものがあります。
明るいところでは、網膜の表面に錐体細胞が出てきて、桿体細胞が出てきます。人間が明るいところから急に暗いところへ行くと、周囲が見えるようになるまで時間が掛かるのは、この細胞が入れ替わるタイムラグがあるからです。
しかし、光が足りなければ、色も鮮やかに出ないのは、陸の上でも水中でも変わらないので、夜間における色の識別は難しいと考えられます。
視力を補う魚の感覚
視界がほとんどないような濁った水の中でも、魚は餌を探し出して捕食します。逆に自分を捕食しようとする魚が近付いて来たときは、機敏に逃げなければいけません。
もし、魚が目だけを頼って生活しているとするならば、偶然、鉢合わせになった相手が小魚か大きな魚かによって捕食対象を判断する事になるからね。
つまり、視力以外の方法を同時に使って、自分を取り巻く状況を確認しなければ生きていく事ができないのです。
人間同様に、視覚以外に聴覚・嗅覚を持ち、更に側線という優れた感覚器官を持つ魚にとって、視覚はどれくらい重要なのかは、まだまだ未知数なところでもあります。
いかがでしたでしょうか。
魚の立場になって考えてみると、釣りの仕方も、楽しみ方も変わってきますよね。
魚の視力ばかりを気にするのではなく、その他の要素に目を向けることも釣りには重要でしょう。
魚になったつもりで、釣りを楽しんでいきましょう。