釣り竿(ロッド)は、釣りにおけるもっとも重要なアイテムのひとつです。

釣りのジャンルに合わせて多種多様の竿が使われていますが、竿の重要な性能の一つである「感度」について、様々な角度から考察して解説します。

「竿」の最終的な役割は魚を釣り上げる事ですが、その他にも仕掛けを投入する、仕掛けを操作する、魚信(アタリ)をキャッチするなど、色々な役割を担っています。

当然、釣りのジャンルによって、竿に要求される性能は異なりますが、竿から得られる情報量が多ければ多いほど、より有利な条件で魚と対峙できる点では共通してるともいえます。

そこで、クローズアップされているのが「感度」。

特に仕掛けにウキや目印を使わない釣り方では、竿の感度の良し悪しは釣りやすさに直結し、釣果や楽しさにも影響を与えます。

 

竿の素材と感度

 

竿の感度を大きく左右するのが、「素材」です。

一般的に物質というものは硬いほど振動エネルギーを伝えやすく、例えば、粘土と鉄で同じ長さ・太さに作った棒に片方から振動を与えた時、どちらが振動を伝えやすいかは明白でしょう。これを、竿の素材に置き換えてみると、より硬い材質を使う事によって感度もアップする事が想像できます。

竿の素材として使われているのは、カーボン・グラス・ボロン・アラミド・竹などで、このうち90%のシェアを占めているのが、カーボン製の竿になります

「カーボン」という素材は、非弾性率(変形のしにくさ)が鉄の7倍程と極めて高く、グラスや竹などと比べてもはるかに高感度な竿の製作を可能にしています

 

竿の主な素材と感度の特性

 

【竹】

古来から使われてきた素材で、数値的な感度はカーボンに劣りますが、魚がもたれてきたような微妙なアタリを感じたり、魚が釣れた時に伝わってくる柔らかな振動は竹ならではです。

【グラス】

かつては鈍重なイメージもあった素材ですが、グラス特有の粘るような感度を好む釣り人も少なくありません。軽量高感度のソリッド素材を穂先に使用した商品も増えています。

【カーボン】

現在の竿の代表的な素材になります。

 

弾性と強度

 

比強度は、物質の引っ張り強度を比重で割ったもので、非弾性率は、物質に一定の荷重を掛けた時の伸び率を比重で割ったものです。この図をみてみるとカーボン素材の強度と弾性が際立っている事が判ります。

 

 

 

 

 

竿の重量と感度

 

竿の感度は「重さ」によっても大きく左右されます。

一般的に同じ素材の物質に同じ振動エネルギーを与えた場合、軽く仕上げたものの方が運動量(振動幅)が大きくなります。これを竿に置き換えてみれば、軽い竿ほど振り幅が大きくなり、感度的にも有利になる事が理解できます。

強度に優れる高弾性カーボンなら、より少ない材料で竿を製作する事が可能で、結果的に軽量で感度に優れた竿を実現できるといえるでしょう。ただ、軽くて高感度の竿というのは、もろくなりやすいデメリットも持ち合わせています。カーボンシートを接着する為の樹脂の量によっても竿の感度は変わってくる為、世界でも群を抜く技術力を持つ日本のロッドメーカーは、感度を犠牲にせず、使いやすい竿を製作しようと、日々研究を続けています。

 

ガイドの重量と感度

 

リールを装着する磯竿や投げ竿・ルアーロッドなどの場合、ラインを通す為の「ガイド」の重量も感度に大きく関わってきます。

結論からいうと、ガイドが軽量になるほど感度は高くなります

ガイドの数が増えるほどラインとの接点が多くなり、ラインから竿に伝わる振動量も増えて感度が良くなるといわれています。このことから、付いている既存のガイドを軽量なものに交換するだけでも、その効果を期待できます。ただし、竿の長さや硬さによっても適切なガイドの位置や数が違ってくる為、バランス良く装着する事が重要でしょう。

 

チューブラーとソリッド

 

カーボン竿は、特殊繊維を炭化させたカーボンシートをマンドレル(鉄芯)に巻き付けて加熱成型し、硬化後にマンドレルを抜き取って、研磨・塗装などの工程を経て完成します。一般的なカーボン竿は、チューブラー(中空)になっていますが、穂先部分は中身が詰まったソリッド形状のものも少なくありません。

竿の感度だけ考えると、前述したように重量の軽い穂先が有利です。したがって、チューブラーの穂先の方が感度に優れているといわれていますが、現在では、強度に優れる極細軽量ソリッド素材も開発されており、感度面ではチューブラーに劣らなくなっています。

ソリッドの穂先は、そのしなやかさによって魚に違和感を与えない事が、最大のメリットであり、高感度という武器を身につける事で、アユ竿やルアーロッドなどに多く見られてくるようになりました。

 

以上、竿の感度について、考察・解説してみましたが、「感度」という概念は、釣り人が体感的に判断しているもので、時には高弾性カーボンの竿よりも竹製の和竿の方が魚信を取りやすい場面もあったりします。

また、手元に伝わってくる物理的な振動だけでなく、竿先の微妙な変化を視認しやすい竿を「高感度」と捉えるベテラン釣り師もいたりします。

釣り人の好みや釣り方によって、竿に要求する感度の性質は違い、単純に数値に表すことのできない要素でもあるのでしょうね。

 

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